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No.3 たいせさん

amaterasu.matsumoto 公開日2023年9月17日

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『反体制とNIKE』

(松本)
今さらやけど街乗りでピスト乗る人間って結構揶揄されへんの?

(たいせ)
まぁ、かなり言われますね。

(松本)
やっぱ、そうなんや。
ピスト乗りの人は、「裕福な日本人のくせに社会的弱者から始まったメッセンジャーカルチャーを猿真似してる」みたいな。そういう意見って、意見ってか最早Disやけど、どういう風にとらえてますか。

(たいせ)
うーん、例えばロードバイクやったら発祥は西洋じゃないすか。それを日本人が乗っているのはおかしいって言われると意味不明じゃないすか?アニメ好きな人はウォルトディズニーしか認めないくらい強引なこと言ってると思う。

(松本)
格好いい。原理主義めんどいしな。
じゃあさ、古典的なブレーキを付けないスタイルに対する批判はどう捉えてますか。今日日そこまでリスク背負ってる人あんまおらんとは思うけどな。

(たいせ)
何とも言えないっすね。どうなんすかね、外す動機って大概フィーリングの良さ故だとは思いますよ。シンプルやし。
やっぱりブレーキついてると野暮ったいって考えてる人は沢山おると思うんですよ。とはいえブレーキが付いてるからってピストじゃないみたいなレッテル貼りも、時代遅れやと思いますし。まぁそこ言われんのは当たり前としか。

(松本)
自転車に限らず、自分は当事者じゃなければ、やっぱり法律よりパッション重視でものを見てまうねんな。んで、その上でシンプルな構造に惹かれてっていう思いやったり、後はそうやな、ただ面白そうだからみたいな動機でブレーキを外している人に対して、何か一家言があるワケじゃないねんけど。やっぱり違法性を過度に主張したくて外してる乗り手は俺みたいな一般人には怖いし。人によっては逆に未成年喫煙アピールしてる中学生のような寒さを感じてまう。それも一面性なんやろうけど。

(たいせ)
当然そういう人も居ますし。ピストカルチャーも一枚岩では無いすからね。でも俺はけっこうスケボーとかBMXのムービーとかで警備員とか警察にオラついてるのとかエンタメとして楽しんでますけどね。その行動が本当に反体制的な活動になっているのかとかは置いといて、通念的なカウンターカルチャーらしいっていうか。

(松本)
確かにエキセントリックなものは犯罪性があっても見てしまうかも。
この前たいせくんが見せてくれた、スケボーの堀米雄斗のムービーでもそういうシーンあったな。

(たいせ)
NIKE SBのやつっすよね。
ダンクのプロモーション。

(松本)
あれ映像はカッコ良かった。でも巨額の富を得たゴールドメダリストが別に支配層でもない警備員のおっさん腐してトリック決めるのは、ストリートでスケボーしにくい日本社会への問題定義にまで昇華できてへんよな。
んでNIKEって反体制的な自由を賛美する割に堀米選手がゲーセンで遊んでるシーンでプレイしてるゲー厶の画面に律儀にモザイクかかってたりして。それって当たり前の事ではあるんやけど、なんか結局NIKEさん、警備員さんにはオラオラで、大企業にはペコペコやんみたいなさ。なんかさ。世知辛さを感じるというか。いやあの映像をこんなキモイ見方してるん自分だけかもしれんけどさー。

(たいせ)
あれ、湾岸かなんかやってるシーンの事っすよね?
いやモザイクすんのはしゃーない思いますけどね。

(松本)
いやそれはわかるねんけどさ!違和感あるっていうか。
例えば警備員にオラついてんのも「これが俺のスタイルじゃい!」ってスタンスの映像ならあれでいいと思うんねん。
でも影響力のあるNIKEがやると意味合いが拗れるやん。
NIKEは基本的に反体制でい続けることがお金になるって考えてるから、これから先も大企業とか行政と戦ったりはせずに、炎上狙いのコンテンツ取り上げるだけやと思うで?コンペはしてくれるやろうけどさ。
でもそれが続くとピストの広告の時みたいに、ストリートのスケボー乗ってる人等の居場所はどんどん無くならへん?
やのに若者は純粋にアウトローなNIKEがかっこいいと思って堀米ダンク買う。
それって彼らのストリートでの居場所を狭めつつ、安全圏で反逆者っぽく振舞いながら「貴方達の味方です!」って顔して靴まで買わそうとする、NIKEが嫌いそうな体制側ムーブをNIKEがしてることにはなってないの。
いやアカンな、よく知らん世界のこと、これ以上批判したらシバかれそうで怖いわ。堀米ダンクかっこいい。

photo: amaterasu.matsumoto

『ピストクリテリウム』

(たいせ)
ピストに話戻りますけど、日本のクリットレースの主催団体なんかは、ストリートカルチャーとしてのピストよりスポーツとしての健全性を重視しているようなイメージがありますね。だからそこに迎合したくないってピスト乗りの人も結構いたりする。
レースを開く限り、自治体や企業との折衝があって健全になっていくのは仕方ないと思うんすけど、そこで溝できるんもったいないなって。
(松本)
それこそスケボーも「Xgames」と言われた時かなり批判があったらしいし、今やと「五輪でスケボ、ダサすぎセルアウトやん!!」みたいな人も絶対おるやん。やから、そういう対立は仕方ないんとちゃうん。
ストリートカルチャーとしてのピストって競技自転車からの派生やけど、完全に別の道行ってたし、迎合したら嫌がる人は絶対いる気がする。
海外やとレッドフッククリテリウムとかRADRACE、後は…リージョンオブロサンゼルスとか?その辺はストリートカルチャーとかHIPHOPみたいなカウンター要素と、スポーツの中間点を模索してる気がしてて、リージョンなんかはファンは多いけど、「真のプロじゃない」とか、「チープなストリート」とかボロクソ言ってる人はいるっぽい。

(たいせ)
日本でやってるんのは多分そういうストリートカルチャーとスポーツのインスパイアじゃなくて、純粋にレッドフックのインスパイアやったりしないんすか。

(松本)
あー。例えば日本でピストクリテを精力的に開催してはるのは「sfiDARE」の児玉選手やん。児玉選手はHPにレッドフックから影響を受けたって書いてるな。レッドフック自体はブルックリンのメッセンジャーとかピスト乗りがIKEAでレースする事から始まったらしいから多分ストリート派生やけど、「sfiDARE」はレッドフックから入って、その後のインスピレーションみたいなんはわからへんな。LOOPの記事とかに発足秘話とか書いてそうやけど。

(たいせ)
カルチャー寄りの身としては、スポーツ色強くなって、ピストでクリテしても勝つのが競輪選手とかアスリートとかなら、それって結局ほかの競技と何が違うんやろみたいなこと考えるんですよね。それこそ自分が新しいものとか別物に靄ってるだけで、流行の兆しなんかもすけど。

(松本)
まあメカ的な部分にしてもピストとロードバイクが走ってても知らん人には違いわからんやろしな。レッドフックがウケたのはある程度ピストバイクがメインストリームのアメリカやったからっていうのはあると思う。

(たいせ)
やから興行とか参加費目的ならピストじゃなくて普通のクリテリウムの方が向いてると思うんすよね。そこでピストを選ばはる意味って、本人が競輪選手やから以外になんかあるとは思うんですよ。

(松本)
ニッチ市場を攻めたとか?専門的な言葉使いたいだけでニッチ市場って何なんかよく知らんけどな!
後、これもまた何様意見やけど、JCLとかの日本のクリテシーンって演出面を頑張ろうとしてはる感あるけど、まだ結構倦ねてると思うねん。選手は一流やと思うけどさ。
だからそこと迎合したくないとか?
CMWCにも繋がってるんやし、なんかビジョンみたいなんは絶対持ってはると思う。それが気になるよな。記事上げてからDMしたらインタビューさせてくださったりせーへんかな。

(たいせ)
そんで普通に無視されてたらいっちゃんおもろい。

photo: amaterasu.matsumoto

『Far East smokin’Skidderz』

(たいせ)
そういや僕自身はニューヨークのスタイルよりファーイーストって日本のピストクルーの影響を大きく受けてますね。
(松本)
ファーイースト。

(たいせ)
Far East smokin’ Skidderzっていうクルーです。
「ブレーキ無し。問題無し。」ってNIKEの広告あるじゃないすか?

(松本)
渋谷パルコに貼られた。さっきちょっと言った奴。

(たいせ)
あの広告に写っている人等がファーイーストなんですよ。

(松本)
そうなんや。全然知らんかった。
その人たちはピストチーム?いやそらそうか。

(たいせ)
はい。ファーイーストはひたすら東京の激坂を古典的なスキッドで攻めるビデオとか出してるんですけど、そのムービーとか魅せる工夫とか凄いされてて単純に映像作品として面白いです。
多分僕だけじゃなくて、ブームの時はファーイーストにヘッズがめっちゃいたと思いますよ。

【余談『ブレーキなし。問題なし。』】

NIKEの『東京 just do it』というキャンペーンは、東京の若者が創るストリートカルチャーにフォーカスした広告企画だった。それはスケートボードやブレイクダンスにシャッターを切り、意図的に対抗文化を煽るキャッチコピーを添え物にしたNIKEらしい広告である。

当時新星で絶頂だったピストカルチャーもNIKEに注目されており、NIKEが撮影を希望したのがFar East smokin’ Skidderz(極東焚煙固定自転車滑止軍団)という東京のピストクルーだった。

2007年渋谷パルコに大きく飾られたのが、パンチサイクル前に集合したFar East smokin’ Skidderzの写真。それに添えられた「ブレーキ無し。問題無し。」というNIKE側が考えたキャッチコピーは、mixiや2chなどのネット掲示板経由で強く批判された。広告はパルコ側の要望によりわずか3日で撤去される。

NIKEは何を考えていたのだろうか?

当然NIKE側はノーブレーキピストの違法性は認知しており、おそらくキャッチコピーには炎上商法的な目論見があった。しかし個人発信が容易になりつつあったインターネットで上がる火柱が想像を越えていたのだと思う。

これを機に暗黙の了解だったピスト乗り達のノーブレーキが世間にばれ始め、健全なメッセンジャーイベントでさえも中止に追い込まれる事態が頻発。世間がピスト乗りへ向ける眼も一層冷ややかになった。

ブームは失速。NIKEのムーブとはキャッチコピーとは裏腹にブレーキレバーを強く握り込んだようなものである。

photo: amaterasu.matsumoto

『音楽』

(松本)
あとはー、最近自転車以外でハマっていることってありますか?

(たいせ)
舐達麻ってラッパーの曲が好きっすね。

(松本)
あの人達ってギャングスタ系の怖い人等なんかなと思ってたけど、聴いてみたらけっこう少年感あるし弱味とかバンバン見せててイメージと全然違った。

(たいせ)
そうなんすよ。俺は邦ラップはリリック重視で聞きますね。例えば同じ大麻賛美みたいなリリックにしたって表現が違えば犯罪自慢と小説くらい違うくないすか。

(松本)
「気にしないビッチ!」みたいなフレーズが嫌ってこと?

(たいせ)
別に嫌悪感あるわけじゃないすけど。そういうのあんま聴かんすね。

(松本)
「気にしないビッチ」、「寄ってくるビッチ」、「俺を誘うビッチ」、「ビッチからコール」実はめっちゃ気にしてるビッチ。

オシマイ

読み返すと自分文句しか言ってない。

次も頑張ります。

誰に話聞くかとか何も考えてないけど。あとNIKE嫌いなわけじゃありません。

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